『流離いの調理人、砂糖と塩を求めて』
参ったのう…。
参ったのう…。
わしは頭を抱えとった。
料理の売れ方が想像を超えていてなんだか微妙である。
何がどこで売れるのかよう分からん。
適当につけている値段の設定がおかしいんじゃろうか。
思わぬところで思わぬものが大売れし、思わぬところで売れんのじゃ。
腹減り野郎共は何が欲しいんじゃろうか。
わしの船では好き嫌いなく何でもガツガツ食べるから、
他所の船の好みが今ひとつ分からんわい。
ふむ、倉庫は圧迫されるがニーズに応じられるよう品数を増やすかのう。
・パウンドケーキ
・仔羊のロースト
・ポークリンゴ
・鶏のロースト
4品あれば少しはお客の期待に添えるじゃろうて。
「おやびーん」
なんじゃ
「バター作るための塩とケーキ用の砂糖が足りませんよー」
ぬ
そうなんじゃ。ポークリンゴ以外は全部バターが必要なんじゃな。
しかし、塩と砂糖を手に入れられるところは少ないぞ。
後は乳を作るための牛と羊じゃが、羊はローストにも使うしの。
振り分けが中々難しいのう。
とりあえず、砂糖を買いにマディラへ行くことにしたぞ。
「おやびん、ちょびっとしか砂糖は買えませんぜ!」
仕方ないから近くの港で豚とアヒルやらを捌きながら往復し
砂糖をせっせと買い込んだわい。次は小麦粉じゃな。
「おやびん、船ができあがった粉で満載です!」
…ガレーは狭いんじゃよ。
ちびちびと粉を作り、バターを作り、ケーキを焼いて材料を減らすんじゃ。
塩は大量買付けのできるベルゲンで調達じゃ! 行くぞ!
こうして出来上がった4種類の荷物を持って各地を巡っておったんじゃ。
途中居眠りをしたり、新たなレシピを忘我の中で模索しとったら
多くの方に声を掛けられたり、物が売れておったよ。
皆様、お声掛けやお買い上げありがとうですじゃ!
それと、パウンドを買ってくださったE様、応援ありがとうでござる!
わし、まだまだ頑張りますぞ。
……わしは幸せ者じゃな。