『魯智深、新しい船に浮かれる』


三顧の礼よろしく、お役人の元に日参しとる最中に
商売の師匠EXILLION殿がシラクサにいらしたんじゃな。
「大きな船が欲しい」という野望を熱くしたためて
伝書カモメで送っとったら
「早速注文したので役所日参しつつ待っててください。
 届くまで自分も釣りをしてますよ」とのこと。


釣り…


ああ! あれは釣りじゃったんか! 
シラクサの港前で大きな船が何隻もじっとしとるから、
わしはてっきり座礁しとるのだとばかり思うておった。
錨を下ろせばその場で釣りができるんじゃな。
航海中の食料採集としてしか釣りをしたことがなかったもんで
座礁しとるのに優雅なもんじゃうと勘違いしとったわ。


幾日か経ち、レシピも貰え、船が出来たと知らせが届いたので
早速港に向かって乗り込んでみる。


…な、なんじゃこの広さは。
水と食料が一か月分も積めるではないか!!
今までは水が7日分、食料が4日分がやっとじゃったのに。


「魚だらけの食生活とおさらばでやんすね!」
「もうオールを漕がなくていいんでやんすね!」
「嵐にあっても船室に篭れば流されないでがすね!」
子分達の声も弾んでおる。では、出発じゃ!


「魯の旦那! 装備を付け替えないと帆が開きませんよ」
いかんいかん。気持ちがはやりすぎてうろたえとるな、落ち着け、わし。


では、今度こそ新しい船で出発じゃ!!
お。おおお! 景色が違う! 帆が大きい! 素晴らしい!


途中で食料品を多く仕入れるコツを教えていただき、
クエをこなしてギルドから発注書を沢山貰うたよ。
これで砂糖も安定して大量に手に入るようになったわい。
順調に菓子職人の道を邁進しとるな。よしよし。


「あのう」


なんじゃ?


「なんで青いリボンを捻り鉢巻にしてるでやんすか?」


ん? これを身につけると料理の腕が上がると教わったんじゃよ。
確かに青い色は集中力を高めると言うだけあるわい。
巻いている時だけチーズケーキが上手く焼けるんじゃな。


「何も鉢巻でなくとも…こう、お洒落に首に結ぶとか…」


馬鹿モン! 海の漢が仕事をするときは
お洒落に捻り鉢巻と決まっとるんじゃ!
蝶結びは左耳の上というのが最新流行と今、わしが決めた!
ほれ、お前達もしっかり巻かんか!


「わっしら泥臭い軍人イメージを払拭するために、
 お洒落な甘い香り漂うパティシエを目指してたんでやんすよ〜」


さ、航海速度もぐんと上がったことじゃし、
どんどん各地を巡って腕を上げていくぞ!


「聞こえないふりしてるでやんす〜」