『魯智深、バレンタインとやらを知る』


腹が減ったのであちこちの港の酒場へ顔を出し、
飯を食い食い酒を飲み飲み酔っ払いつつ街を徘徊しとったら、
見慣れん顔のお嬢さん方が幾人も不思議そうな顔しておる。
ちょっと話を聞いてみるかの。


「不思議な石を拾ったの…なんだか暖かいのよね」


ふむ。よう分からんが世の中に妙なモンは沢山あるからのう。
ま、大事にとっとくがええよ。珍しそうな石じゃしな。


話しかけてもそれ以上のことは分からんかったから
それっきりすっかり忘れとったのよ。


そしていつものように料理に精を出し、商人の依頼を請けとったら
MANZANAミ☆嬢が「一緒にアテネに行きませんかー」と誘ってくださり、
酒場でお友達の麗しいお嬢さん方も紹介して下さったんじゃな。


おお、戦っている時よりも名倉達の士気が高揚しておる…。
ま、普段わしの男前な髭面ばかり見とるから仕方ないかの。
わしも両手に華状態に少々浮かれ、はやる名倉の首根っこを
両腕両足で押さえつつ、二つ返事でご一緒させてもろうたよ。


…こ、このお嬢さん方は何者なんじゃ…。
それはもう大きな船でびっくりじゃい。
航海途中にもでかい仕事を上手に請けて華麗にこなしとる…。
また新たな商人世界を垣間見てしまうわしであった。


そしてアテネ到着。
波止場に立つご婦人が困っている。
ふむふむ…暖かい石の欠片がどこかに飛んでいった?
探しておくれでないかい?


……。


アレか(ぽむ)!


その後、お嬢さんがたと共に各港を巡って石の欠片を集めたんじゃ。
石の持ち主の困りごとを解決して、お礼に石をもらうんじゃな。
困りごと解決に同行お嬢さんがたが代わる代わる手を貸してくださる。


そして無事、アテネへ石を届けると、
「あなたの今の温かい心を忘れちゃダメよ」とのご婦人の言葉。
わしは旅行中のお嬢さん方の温かい心と機知が身に沁みたのよ。


……これがバレンタイン精神というものか。


最近涙もろくてのう…。


「兄さんのためのバレンタインプレゼントに
武器を手作りするから鉄材が欲しい」という
漢前な妹さんの心意気にも感動したわしであった。