『子分、推理するの巻』


「船長のテントにこんなものがあったぞ」


・誰でも出来る船大工入門
・簡単! 陸戦用小道具 
・家庭の医学調合実録 


「どう見ても買ったばかりの新品だな」
「なぜ3冊も工芸本を」
「冊数より統一感に欠けているのが怖いでやんす」
「わっしが覚えている限りでは一昨日の晩、
 船の中で船大工入門を読んでいたでやんす。
 海で拾った丸太を木材にしてやした」
「『丸太は海では中々拾えない』とぼやいていたな」
「それで昨日の晩、内陸に入ったのか…」


「昨日の昼頃、道具屋で陸戦本を買ってやしたよ」
プリマスの近くの丘で『草が見つからん』とぼやいてたな」
「だから滅多やたらと街もないのに上陸してたのか」


「で、今朝一番に医学調合本を買ってきたわけか」
「工芸本コーナーで目に付いた入門書を片端から買っているようだな」
「道具屋の親仁に手玉に取られてるんじゃ」
「ま、まあ、草が見つかって大喜びしてるでやんすし」
「よりによって街の傍でな…」


「ま、まあ、楽しそうになんか作ってるでやんすし」
「デッキブラシをテントから溢れるほどにな……」
「新米、船に戻ったらお前が使って使って使い切れ」
「殺生でやんすよー」


緑の薬が出来たんじゃ! 誰か試飲してみんか?


「俺、船長特製ブラシを船に運んできやすね!」
「俺は木材を運びやすいように纏めてきます!」
「新米! お前そういや腹が痛いとか言ってたよな!」
「そうそう、丁度良かったじゃないか。新米だから
 慣れない海生活で疲れてるんよ。頂戴しとけ! じゃな!」
「え? え?」


ほほう。ではお前にやろう。草を贅沢に20も使ったんじゃぞ。ほれ。


「いえ、その」


本によると力がみなぎってくるらしいぞ。(ずい


「あの、その」


切り傷・刺し傷・打ち身・捻挫・止血、なんにでも効くんじゃと(ずずい


「親分、早く酒を作れるようにならんかなぁ」
「もう海に帰りてぇよなぁ」
「お、新米が来た」
「あいつには気の毒したが、これも新米の役目だ」


「……ちょっと不敵な面構えになってないか?」
「うむ、中堅の顔になったな……」